ファンキー末吉とその仲間達のひとり言

----第89号----

2003/09/06 (土) 19:54

内モンゴルにいる・・・

LAから中国人満載の中国国際航空に乗って、
北京に帰ったと思ったらすぐXYZの東北ツアー、
成田からすぐ青森に飛んで、
そのまま一行は韓国へ。

ユニバーシアードの一環のロックフェスティバルに出演と言うことは、
あの噂の北朝鮮美女軍団に会えるのか?!!!
ひょっとしてライブを見に来たりするのか?!!
(来ぃーひん、来ぃーひん)
ひょっとして近所の居酒屋で飲んでたら彼女たちが飲みに来たりするのか?!!
(来ぃーひん、来ぃーひん)
そこでひょっとして金正日のグチでも言ってたりするのか?!!
(言わへん、言わへん)

と思いながらソウルからテグへの汽車に揺られながら本場のピビンバに舌鼓。
列車の旅もええもんやねぇ。

結局北朝鮮美女軍団とは会えなかったが、(当たり前じゃ!)
韓国の数千人の観客は大熱狂の中、ライブは無事に終わり、
また汽車に揺られ、ソウル経由で日本に帰る。

ワシ・・・そのまま北京の方が近いんですけど・・・

そしてせっかくなので四国に里帰りのため、
飛行機もううんざいりゃわぁと思いつつも高知往復。
そのまま宇都宮まで五星旗のライブのため往復したら、
もうさすがに車ももううんざりやわぁと思いつつ、翌日にはまた飛行機で北京に帰る。

もうええやろと思ってたら電話が鳴った。
零点(ゼロ・ポイント)のドラマー、Eである。
(関連ネタ:https://www.funkycorp.jp/funky/ML/37.htmlhttps://www.funkycorp.jp/funky/ML/88.html

「Funky!北京に帰って来たか!ワシら今、内モンゴルでMTVの撮影中。
見渡すばかりの草原で最高やでぇ!
今から来い!夜9時の最終便があるはずや!」

・・・また飛行機ですかぁ・・・

と思いつつも、よく考えたらヤツ等から今回のプロデュース料をまだもらってない。
ヘタをしたらいつぞやのように取りっぱぐれると困るので、
(関連ネタ:https://www.funkycorp.jp/funky/ML/60.html
もう一度ギタリスト、Dに電話で確認する。
「ワシの銭は?・・・」
「もうちゃんと用意してまんがな!」
と自信満々のD。
そんなら集金と言う名目ではるばる内モンゴルまで行きますがな!

北京から飛行機で1時間半、
内モンゴル自治区で2番目に大きな街、「包頭(バオトウ)」の飛行場に夜中に着いて
そのまま見知らぬ人の迎えの車に乗せられる。
夜なので景色は全然見えないが、察するにかなり大きな街のようだ。
ひときわ大きなネオンサイン、見るからにナイトクラブである。
「ここはうちの会社がやってるナイトクラブだよ」
迎えに来た人が誇らしげにそう言う。

お前らの友達ってみんなナイトクラブ関係かい!!!

そのまま車はそのナイトクラブの向かいのレストランに乗り付けて中に通されると、
中ではギタリストDが数人と食卓を囲んでいる。
そこに通されるといきなり全員から大歓迎を受ける。
「おう、Funky!紹介するよ。彼はここの市長で、彼は副市長。
彼は公安部の部長で、そして彼は著名な投資家で彼女は・・・」
偉い人ばっかりの中で窮屈に席に座るワシ・・・

あのう・・・ワシの金は・・・

と言いたいところだが彼にもメンツがあるので、
「じゃあもろもろミーティングは明日にしますか!!」
と言うことにして出された料理と白酒を飲み干す。
中国でもモンゴル地方の人は飲むのよぉ・・・

酔っ払った副市長がワシをどうしても次の店に連れてゆくと言うのをDが阻止して
用意されたホテルの部屋に帰る。
そのままナイトクラブに連れて行かれるやと思いきや、
「明日は7時から撮影だから」
とそのままお開き。
「後で電話するよ」言いながらいつまでたっても電話が来ないので
白酒とここ数週間の移動の疲れで酔いつぶれて寝てしまった・・・

東京→北京→LA→北京→東京→青森→盛岡→仙台→郡山→成田→ソウル→テグ→ソウル→東京→高知→東京→北京→内モンゴル→→→→

なんか夢でうなされそうになりながら電話で起こされた。
「今からある人が迎えに行くからとりあえず昼メシを一緒に食え」
7時から草原に一緒に行くんじゃなかったんですかぁ・・・

しばらくして夕べの公安部の部長がじきじきに迎えに来て、
街中の「草原パーク」の中のレストランで本場のモンゴル料理をご馳走になる。
大草原を期待してたらいきなり人口の草原なのでちとがっかりしたが
最初に出てきた馬乳茶でいきなり上機嫌。
いわゆるミルクティーなのだが、砂糖ではなく塩っけがあっていくらでも飲める。
お茶受けに羊乳チーズとか揚げパンとかいろいろ出て来て、
それだけで満腹になってしまいそうである。
馬乳茶には日本で言うオカキをもっと細かくしたような揚げ米を入れたり、
それに羊のバターなんかを浮かべたりしてこれも最高である。

料理もこれが非常に美味。
子羊のシシカバブなんぞ最高である。
「あのう・・・馬乳酒っつうのがありまへんか?・・・」
一度東京のモンゴル料理屋で馬乳酒っつうのを飲んだのが非常にうまかったのだが、
ラベルを見ると製造元が和歌山県で原料が牛乳だった。
是非本場のを飲んでみたいと思ったら、
出てきたのが38度の馬乳白酒だった。

モンゴルの人は本当に白酒が好きである。
昼飯晩飯に必ず白酒を飲むと言う。
口にすると最初は強いアルコールにウッと来るが、
後でほのかに乳の香りがして甘い。
「旨い!」
接待を受ける側としては
たくさん食って飲んで酔っ払って楽しんであげねばならないので大変である。
羊料理を頬張りながら乾杯を繰り返す。
特に旨かったのがこの辺の羊が食っていると言う牧草のおひたし。
「この辺の羊肉が旨いのはこの草を食って育ってるからだよ」
と自慢げに説明を受ける。

しばらくしてからモンゴル民族衣装に身を包んだ楽隊がやって来た。
歌姫がなみなみと白酒の注がれたコップを持って歌を歌い、
歌い終わったらそれを飲み干さねばならない。
その歌姫がまっすぐに客人であるワシを見つめて歌うので照れ臭い。
「こちらでは歓迎の意味を込めて3回飲み干さねばなりません」
美人にそう言われれば3杯飲みましょ!
「この酒は飲んでも酔わないから何杯でも大丈夫でしょう」
と言われてもこれ・・・かなりキツいんですけど・・・
「大丈夫、大丈夫。酔ったら馬乳茶飲めばまた酒飲めるから」

飲んで食っての大接待が終わったのが3時。
昼前に集合したからゆうに3時間は飲み食いしてたことになる。

満腹・・・

ふらふらでホテルまで送ってもらい、部屋で一休みしてたら電話が鳴る。
ドラマーのEである。
「ファンキー、今から俺の朋友が迎えに行くから」
また接待ですかぁ・・・
結局メンバーが夕方撮影を終えて帰ってくるまら接待漬けになる模様である。

やって来たのが自称ダンサーの若い美女。
「お前は全国にこんな美女はべらしとるんかい!」
彼女がいろいろと街を案内してたらまた電話が鳴る。
ドラマーのEである。
「ファンキー、今から別の朋友が迎えに行くから、
そいつにキーボードのCのところに連れてってもらえ。
Cがお前を本物の草原に連れて行ってくれるから」
あのう・・・そいで君らは今どこにいるんでしょう・・・
「俺達は用事があるからもう北京に帰る」

あのう・・・ワシの金は?・・・

何だかわけがわかりません!
美女とそのままお別れして車に乗せられ、
高速をゆられること2,3時間。
内モンゴルで一番大きな街、「呼和浩特(フフホト)」の料金所で降ろされ、
そこで待機していたキーボードのCの車に乗り換える。

ワシを乗っけて来た車はそのまま任務を終え「包頭(バオトウ)」まで帰り、
キーボードCの車と、その友人を乗せた車の2台でひたすら山道を走る。
「よう麺」と言うのが世界一旨いと言う武川と言う小さな街を過ぎたらもう周りには何もない。
時刻はもう8時を越えていて、暗いので全然見えないが周りはもう草原らしい。
民家もない電灯もない一本道をえんえんと進むこと1時間、
道路わきに植えられた街路樹もなくなり、
「ほらもう周りにはもう樹もないだろ。見渡す限りの草原だぜ」
と言われても真っ暗で何も見えないんですけど・・・

景色に何も変化がないのでかなり退屈してたらいきなり車が止まった。
2台の車の運転手が降りて何やら相談をしている。
「おかしいなあ・・・この辺だと思ったんだけどなあ・・・」
行き過ぎたとばかりUターン。

でもあーた・・・目印が何もないのにどうしてわかるわけ?・・・

草原の中の舗装された一本道を引き返し、
とある交差点で、今度は舗装されてないわき道に入る。

あのう・・・なんで目印もないのに曲がるところがわかるわけ?・・・

もう真っ暗で何も見えない道をひたすら進むこと1時間。
しまいには道もなくなり、草原の中の道なき道を進んでゆく。

あのう・・・周りに何の目印も道もないのになんで方向がわかるわけ?・・・

更に車に揺られること2時間。
景色は一向に変わらない。
日本で2時間車を走らせて景色が全然変わらないところってあります?
「包頭(バオトウ)」で拉致されたのが夕方の5時。
もう6時間近く車に揺られている・・・

・・・東北ツアーにもういっぺん行けるんですけど・・・

ある意味XYZのツアーより過酷な草原の旅は夜中の12時ぐらいにやっと終わりを告げ、
草原の彼方の一軒のモンゴル包(パオ)に着いた。
見渡す限りの草原・・・と言われても真っ暗で何も見えない・・・
パオの中に通され、チンギス・ハンの肖像の下の貴賓席に座らされ、
今から宴が始まるのである。

もうさすがに疲れ果てているのでビールを頼もうとすると、
「ここをどこだと思ってんだ。ビールなんかない!」
と一括される。
まあそう言えば電気が通じてるだけいいが、
「買い物はどこに行くんじゃい?水は?・・・」
と言う状況である。

昼間と同じように羊乳チーズやら揚げパンやらをつまみながら、
今度は容赦ない度数の高い本物の白酒が出てくる。
そして冷菜を終えて出て来たのが羊のスペアリブ。
これがとんでもなく旨い!
モンゴルナイフで肉を削ぎながらそのまま口に入れる。

旨い!

日本人は羊肉には独特の臭みがあるから食べないが、
中国ではいろんな香辛料でそれを消して美味しく食べる。
しかしここでは何の香辛料もなく、そのままボイルして出されて来る。
羊独特の臭みが、ここでは臭みではなく旨みとなってびっくりするほど旨い!
「この辺の羊はこの辺の環境でこの辺の草を食って育ってるからね。
北京では絶対に食えない味だよ」
けだし納得である。

零点(ゼロ・ポイント)はモンゴル族のバンドだと思われているが、
実は出身がこの辺なだけで、民族的にはキーボードのC以外は全員漢族である。
彼と同じくモンゴル族の朋友達の
モンゴル語と中国語の混ざったお喋りを聞きながらひとりで食う食う・・・

またこれがこの強い白酒によく合うのじゃ・・・
ひとりでぐびぐびやってたらキーボードCが耳打ちする。
「後でたんまりお前に飲んでもらうことになるから今から飛ばすな」

ひえー・・・

つい酒を飲む手が止まってしまう。
なるだけ酒を飲まないように羊肉を頬張ってたら、
民族衣装をまとったおばはんがパオに入ってくる。
みんなやんややんやである。
「ファンキー、昼間は楽隊が来ただろうけどあんなのは嘘だよ。
本物はこうやって歌だけで歌うんだ」
おばはんが朗々とモンゴル民謡を歌い上げる。

歌い終わったら例のごとく杯を干すのであるが、
それがひとりひとりかわりばんこに延々と続く。
歌い終わらないうちに杯を干すとそのまま2番が始まりもう一杯飲み干さねばならない。
ひどい時には歌い終わって飲み干してもまた2番が始まりもう一杯飲まねばならない。

ワシ・・・もう泣きたいんですけど・・・

ワシの涙を代弁するかのごとく突然雨が降り始める。
「ほらほら、天もお前を歓迎して雨を降らしているじゃないか」
この辺でこの季節に雨が降ることは非常に珍しいらしい。

次にはみんなでかわりばんこにモンゴル民謡を歌う。
「お前も何か歌え」
と言われても何も歌えないんですけど・・・
「何か日本の歌うたえ」
と言われてもねえ・・・

モンゴル民謡は800ぐらいあるらしいが、モンゴル族はほとんどそれを歌えると言う。
ワシら日本人が自分の民族の歌を何曲歌える?

仕方がないので適当な歌詞をつけて歌い始める。
「ドンドンパンパンドンパンパン
ドンドンパンパンドンパンパン
ドンドンパンパドンドンパンパドンパンパン
夕べ父ちゃんと寝た時にゃー
変なところにイモがある
ドンドンパンパドンドンパンパドンパンパン」

何か歌詞が違う気がするがどうせ知ってるやつはひとりもいない。
調子に乗ってどんどん歌う。

「ドンドンパンパンドンパンパン
ドンドンパンパンドンパンパン
ドンドンパンパドンドンパンパドンパンパン
夕べ兄ちゃんと寝た時にゃー
変なところにイモがある
ドンドンパンパドンドンパンパドンパンパン」

なんかわからんがえらい受けてるので一安心してまた飲み干す。
こんなでたらめがこの草原で「日本を代表する民謡」として語り継がれたらどうしよう・・・

芸がない男はひたすら食って飲んで、そして友情を確かめ合うしかない。
結局ひとり一瓶以上白酒を空け、空き瓶の転がるパオの中でそのまま酔いつぶれる。
もう夜中の3時を回っている。
誰が言ったか明日は朝5時半に起きて朝日の中、馬に乗るらしい・・・

無理じゃ・・・

もう帰りたい・・・
それよりもワシの金は?・・・
草原にまた数時間揺られる夢を見つつ朝方目が覚めた。

パオの外に広がる景色に肝をつぶした。
見渡す限りの草原とはこのことである。
夢遊病者のようにふらふらと外に出る。
四方八方どこまでも続く大草原である。

(写真ではとうてい伝わり切らんが:https://www.funkycorp.jp/funky/ML/Mongol2.JPG

文明のものと言ったらこのパオと、
電気を引くために自分で建てたのであろう電柱と、
道と言うより車が通るので出来た轍だけである。
となりの牛舎からは牛が来て乳を搾られ、
その隣の羊小屋からはたくさんの羊が羊飼いに追われて草原に歩いてゆき、
やがてその羊の群れも草原の彼方に見えなくなってしまった。

(ほんまに写真ではとうてい伝わり切らんが:https://www.funkycorp.jp/funky/ML/Mongol1.JPG

こんなところがこの地球上にあるのか・・・

パオの正面の小高い丘にはモンゴル族の神棚とも言える、
石を積み上げて作った廟のようなものがあり、
願い事を唱えて石を拾って新たにそこに積み上げる。
ここは天に一番近い場所で、
天は人々の願いをこうして聞きいれながら神棚はどんどんと大きくなってゆくのである。

(ほんまにほんまに写真ではとうてい伝わり切らんが:https://www.funkycorp.jp/funky/ML/Mongol3.JPG

神棚から帰ると朝飯が始まる。
夕べの羊肉がそのまま出て来る。
それをまた朋友達とおしゃべりしながらモンゴルナイフでお椀に削いでゆく。
いっぱいになったところで揚げパンとオカキのような煎り米を入れてお茶を注ぐ。
地元の人たちがどうして朝からあんな油肉を好んで削いでいるかと思ったら、
油肉の方がその脂が溶け出して先日のバター茶のように非常に美味しく食べられるからであった。

給仕は昨日歌を歌ってたおばはん。いわゆる一家の主婦が歌うのね。
7年前ソロアルバムを録音した時に、
どっかからかモンゴルスキャットのおばはんがブッキングされ、
あんまし美味いもんでさぞ名のある人かなと思ったら、
「モンゴル人は誰でもこれぐらい歌えるよ」
と言われたのを思い出した。
歌と酒と羊と草原。
パオから覗くモンゴル族の神棚を見上げながら思った。

金は・・・まあ、どうでもええか・・・

9月7日にはXYZとBOWWOWのイベントが川崎クラブチッタで行われる。
もしそこにワシが現れなかったら、
もう末吉はこの草原で、羊と牛と馬と、そして酒と朋友達とに囲まれて一生を終えるんだなあ
と思って下さい。

ファンキー末吉


戻る