ファンキー末吉とその仲間達のひとり言

----第111号----

2005/09/04 (日) 17:13


「見たよ、見たよ・・・」
先日からやたら人にそう言われるので何かと思ったら、
7月1日に行われた大きな野外ロックイベントがテレビで放映されたらしい。

崔健(ツイ・ジエン)、唐朝(タン・チャオ)、黒豹(ヘイ・バオ)、超載(チャオ・ザイ)、等
中国ロックの創始者の世代の大御所バンドから、
それを受けて商業的に一番ブレイクさせた零点(リン・ディエン)、
香港からはBEYONDのギタリスト、黄貫中(PAUL)まで参加した、
そんな中国ロックの大同窓会のような顔ぶれの中、
ワシは韓紅(ハン・ホン)と言う人気歌手のバックバンドとして呼ばれ、
毛沢東を讃える革命の歌を「ロックにアレンジしてくれ」と言われ、
それをしゃかりきに叩きまくっていた。

「何十年の歌手生活の中で、初めてよ、ロックイベントになんか呼ばれたの・・・
ロック歌手、韓紅(ハン・ホン)・・・何かくすぐったいわねぇ・・・」
と言ってMCで受けを取ってから気合たっぷりで始まった韓紅(ハン・ホン)のステージ。

しかしワシのアレンジがちと複雑過ぎたのか、2番に入りそびれた韓紅(ハン・ホン)、
バンドもどのパートを演奏したらいいかわからいのでちりじりバラバラになるが、
さすがは場慣れした大御所歌手である。あわてず焦らず、
「ありゃりゃ、入りそびれたわ。どっから歌うの?まあええわ・・・」
とばかり、ドラムス!ファンキー!」と絶叫してワシに振る。

しゃーないのでドラムソロごとくドラムをぶっ叩く。
このクラスになるとメンバーも一流のプレイヤー達なのでそれに絡んで来て盛り上げる。
最高潮に達した時に韓紅(ハン・ホン)のカウントにより2番に入り、
結局おかげでこの曲はこのコンサートで一番盛り上がった演奏となる。
ステージ脇のスクリーンではこれでもかと言うぐらいワシのドラムのアップ・・・
客席で見ていた嫁は
「歌手を差し置いてあんなにアップになったらアカンわ・・・」
と言うぐらい誰よりもフィーチャリングされていた。

しかしここが問題である。
この日のテーマは共産党がファシズムに打ち勝った記念日を祝うコンサート。
つまり抗日記念イベントでもある。

反日、反日と騒がれるご時世に、
日本人ドラマーがこんな抗日イベントに参加して
しかもこんなにフィーチャリングされたらアカンわぁ・・・

楽屋は昔懐かしい友達ばかりなので、
「お前、今日は何のコンサートか知っているのか!
日本人であるお前がどの面下げてドラム叩いてんだ!」
とワシをからかうが、
「こんな面でぇーす」
とばかりアホ面を巨大スクリーンにさらす。
恐らくテレビのオンエアーでも
かなりのカット数でこのアホ面が全中国に流れたことであろう・・・

日本のNHKと同じで、
中国でもひとつの大きなプログラムは北京電視台等関連放送局で何度も再放送される。
全中国にこのアホ面が流れる度にみんなワシに「見たよ、見たよ・・・」と言うのだが、
とある友人は大受けしてこう言った。

「日本人がこの趣旨のイベントに参加して、
しかもこれだけ活躍すると言うことは素晴らしいことだ。
俺は今から中国じゅうのマスコミ集めてお前のことを取材してもらう。
共産党もお前の一生の食いっぷちのみならず、住居や市民権、
ヘタしたら中華人民共和国の国籍を与えてくれるやも知れん!」

頼むからやめて下さい・・・そっとしといて下さい・・・

ファンキー末吉


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