ファンキー末吉とその仲間達のひとり言
----第23号----
2000/07/21 04:50
マレーシアである。
首都のクアラルンプールである。
タイからもっと近いと思ってたら思ったより遠いのね・・・
隣の国やと言うてもどちらも縦長の国やからね。
結局4時間も飛行機にゆられるのね。
・・・と言っても今回俺は乗ったらすぐ寝て、
着いたら隣のオッサンに叩き起こされたので何も覚えてない。
以前爆風のツアーで熊本かどっかに行く時、
飛行機のエンジンがトラブって、
ドーンと言う音と共に一瞬急降下。
機長の
「みなさま、機体が少々揺れましたが大丈夫です。
大丈夫ですが念のため羽田空港に引き返します。あっ!・・・・しーん・・・」
と言う不気味なアナウンスと共に引き返し、
飛行機を乗り換えてやっと現地入りした時も、
顔面蒼白のメンバーをよそに、
俺は乗ったらすぐ寝て起こされたらまだ羽田だったので
何のことやら覚えてない。
さて寝ぼけ眼でクアラルンプールの空港に着いたらぶったまげた。
前回来たのはもう5年ほど前だろうか、
こんな近代的な空港ではなかったような気がするが・・・
5年前に来た時も、マレーシアはなんて近代国家なんだと思ったものだが、
今回さらにそれを改めて思い知らされた。
さて今回の訪馬目的は、
先ほど全てが終わったばかりのタイプロジェクトのご報告と
X.Y.Z.英語版のプレスとライセンスをお願いしている、
P社へのビジネスミーティングのためである。
移動にこんなに時間がかかるとは思ってなかったので、
最終便にて夜中に着いて、
次の日の最終便にてタイに帰らなければならない。
時間がないのよ・・・
そう言えば結局タイでも時間がなかった。
これと言うのもホテルの隣のマッサージのせいである。
日本円で700円ほどでタイ式全身マッサージとフットマッサージが受けれる。
フットマッサージは1時間なのだが、
全身マッサージは2時間とフルコース。
これが気持ちよくてつい寝てしまうのだが、
毎日この3時間を捻出するために、
寝るヒマ惜しんで飲んでた酒も飲まずにマッサージにいそしんでいた。
この俺が酒より選ぶんやからどれだけ気持ちいいか・・・
さてそんなことよりマレーシアである。
マレーシアの思い出は、
5年前タクシーの運転手に連れられて行ったダンドゥット・バーである。
ダンドゥットともともとインドネシアの大衆歌謡なのであるが、
同じ民族で、言語がそのまま通じるマレーシアとインドネシアと言うことで、
当然ながらマレーシアにも流れ着いている。
基本的にはリズムはルンバなのであるが、
クンダンと言うタブラのような打楽器のリズムに乗って、さすがイスラム文化と言うか
首が横に平行に動いてしまうようなあのリズムと旋律が何とも言えない。
「よし、そのままタクシーに乗って、ダンドゥット・バーに直行だ!」
とばかり空港の人にタクシー乗り場を聞いたら、
そのままバス乗り場に案内された。
クアラルンプールは空港から市街まで遠く、
まあ言ってみれば成田のようなもんなのだが、
短パンにハリウッドのTシャツ(嫁からの誕生日プレゼント)、
スニーカーにパソコンリュックサックと言う、
どっから見ても典型的なバックパッカーである俺の風体を見て、
「こりゃタクシーで行かせるわけにはいかん、バスじゃ」
と判断したのだろう。
タイもそうだが、ここマレーシアも
本当に悪い人がいないのではないかと思うぐらいいい国である。
これ、ほんと。
でもねえ、言っちゃ悪いけど金なら持ってるでぇ。
X.Y.Z.英語版の全世界への製造の拠点であるここへの
支払いを今回は現金で持ってきているのである。
だって為替手数料って高いのよ。
100万円支払うとすると15万円取られるのよ。
手持ちで持ってきた方が安いっつうねん。
この汚いリュックに札束が入ってるとは誰も思わず、
小汚いバックパッカーとしてバスのターミナルに行くが、
今度はどのバスに乗ったらいいのかわからない。
思えばL.A.でもこうやったなあ・・・
中国系の人が一生懸命自分でバスに荷物を積んでたので聞いてみた。
思えばどうして中国系の人っていつもみんなたくさん荷物を持ってるんでしょう・・・
この辺の人は広東人か福建人が多いのだが、
それらの人同士がコミュニケイションするために北京語も喋れたりする。
まったくもって中国人は偉大なのであるが、
俺はあえて英語で喋った。
今、頭の中では中国語と英語がごっちゃになってて、
このチャンスに英語に切り替えないとやっていけない状態なのである。
まあ、それはいい。
結局バスに揺られ、ホテルに着いたら、
そこのバーで生演奏をやっていた。
もちろん洋楽なのであるが、
ついでなので俺は部屋にも入らずに直接そのバーで一杯やった。
マレーシアはイスラム国家で、
宗教省なる省庁もあって宗教裁判もあると聞くが、
そんな中、夫以外に肌を露出してはならない敬虔なイスラム教徒が
今流行りのチューブトップでお臍まで露出して歌ってていいのか!
俺が5年前、あのダンドゥット・バーに惹かれた大きな理由は、
そこで歌ってた綺麗なねーちゃんである。
宗教上酒を飲まないはずのマレーシア人が、
飲んでもいい中華系の人間は絶対に来ないであろうダンドゥット酒場にて、
宗教裁判を恐れず・・・かどうかは知らないが・・・
地下のクラブで(そのバーは廃屋のようなビルの地下だった)、
肌の露出こそは一切してないがプロポーションはくっきりわかるドレスをまとって、
聞きようによっては淫靡なダンドゥットに身をくねらせる姿が今も忘れられない。
俺がアメリカのエロ本が好きではない理由に、
あのモロ出しの色気のなさがある。
歌舞伎町のストリップにも数年前友人に連れられて行っては見たが、
あのエアロビクスのようなご開帳には閉口する。
ああ、あのつつしまやかなダンドゥットお姉ちゃんはまだあそこで歌ってるんだろうか・・・
タクシーを拾おうと思ったら、
なんと俺が泊まっているこのホテルには何とハードロックカフェが入っていた。
5年前も来たなあと思って覗いて見た。
当時はマレーシアにロックバンド・・・と感激したもんだが、
こうも諸外国が日常になってしまうと別に普通のハコバンである。
そうそうに後にした。
タクシーを拾って、
「ダンドゥットを聞きたいんだ。出来れば生演奏がいい。どっかに連れて行ってくれ」
とまくしたてる。
思えば相手も英語のネイティブではないので、
心なしかL.A.より通じやすいような気がする・・・
「Oh! ダンドゥット?!」
色黒のマレー系運転手がいぶかしそうに聞き返す。
「日本人かい?ダンドゥットが好きなのかい?そりゃ珍しい。
外国人にとっちゃ全然ポピュラーな音楽じゃないのにねえ・・・」
日本で言えば演歌バーを探すフィリピン人のようなもんか・・・
連れられたところが「サン・ダンドゥット」と言うクラブ。
「最近はダンドゥット・バーでもポップスやってたりするよ」
と言う運転手の言葉通り、
そこはいわゆるキャバレーでカラオケの生バンドだった・・・
そうそうに後にする。
またタクシーに飛び乗って同じ風にまくしたてる。
「ダンドゥットかい?よし連れてってやろう」
と言って連れられたのは何のこっちゃない俺のホテルの近くだった。
「この辺はここもダンドゥット、あそこもダンドゥットだよ。ほな」
「ほんまかいな」
「ほんま、ほんま、お姉ちゃん持ち帰りも出来るよ」
いわゆる日本で言うと
「演歌バー連れてって」
と言って高級クラブ街に下ろされた外国人である。
俺が行きたいのは彼らにとっては歌舞伎町の裏通りの民謡酒場なのかも知れない・・・
カラオケ店に入る気もせず、とぼとぼと歩いてホテルに帰った。
いろんなバーで生演奏が繰り広げられていた。
どれもいわゆる西洋音楽である。
ああ、俺の大好きだったマレーシアはどこに行ったのか・・・
つつしまやかなあのお姉ちゃんは今どこで歌っているのだろう・・・
肌を露出してポップ・ロックを歌うマレー姉ちゃんを横目で見ながら、
「マレー人やのに何でダンドゥットやのうて西洋音楽歌ってるんやろ」
などと考えてみたりする。
あのダンドゥット歌ってた姉ちゃんが、
肌露出して西洋音楽歌ってるあんた達より一番色っぽかったでぇ。
ホテルに着いてドアのガラスに映る自分が見えた。
長髪で洋服を着て、西洋音楽の権化であるRockとJazzをやっている。
英語版をリリースしてアメリカの中華街に移住しようとしている。
俺って何なんやろ・・・
ホテルでひとりで飲もっと・・・
飛行機で熟睡したため眠れずにこれを書いているのであった・・・
音楽界の兼高かおる(今、誰がこの名前を知っとるっつうねん!)ファンキー末吉