ファンキー末吉とその仲間達のひとり言

----第57号----

2002/02/07 (木) 8:01


大阪に来ている。
寝床はいつもように守口の大村亭である。

夕べは京都からの帰りに天下一品(てんいち)のラーメン。
一昨日はホルモンの「へんこつや」
昼間はお好み焼き、と胃が休まる暇もない。
デラックス銭湯「摂津の湯」で体重を量ったら、確実に1kg太っていた。

こっちに来ると風呂三昧である。
昨日も朝一番で「摂津の湯」に行き、
レコーディングの合間ではスタジオ近くの温泉銭湯に行っている。

今回はその銭湯でのお話。

もともと今回の関西入りはふたつの目的がある。
ひとつは16日にバナナホールで行われるXYZレコード祭りのプロモーション。
もうひとつは「三井はんと大村はん」のレコーディング。
大の阪神ファンの三井はんのたっての願いにより、
4月からの開幕に向けて阪神の応援歌を発売するのだ。

プロモーションの方は朝から晩までラジオ等メディアで告知。
今日も午後から三井はんの持つKBS京都の生放送で喋りまくる。

「一応ワシ、街を歩けば中国語の先生や言うてジジババに囲まれる有名人でっせ。
それをマネージャーもつけず、XYZのTDのスタジオから直で夜行バスに放り込まれ、
自力で放送局まで行ってこうしてプロモーションし、
ついでにこうしてXYZの新曲かけさせてもろて、
あ、ええ曲でっしゃろ、これ。すんごいバンドでっしゃろ、ほんま。
今度大阪でライブやりまっせ!16日のバナナホール、みなさん来ておくんなはれや。
こうして夜行バスで来て、こうしてプロモーションさせてもろて、
こうしてラジオ聞いてくれてはる人が6人、
6人の人がチケット買うてくれて初めて、この夜行バスの往復運賃が出まんねん。
そうでんねん、うちの会社。お前もええ年こいた大人なんやからひとりで行けるやろ、
ひとりで行ってチケット売って、そいでその金で帰って来い!言いまんねん。
今からチケット買うてくれなワシ、もう帰りのチケット買えまへんねん。
16日バナナホールでっせ。
XYZレコードのいろんなアーティスト出まっせ。
XYZ、五星旗、ファンキー松田、秋人、がっしゃん、後藤ゆうぞう、三井はんと大村はん、
四国からはROCOCOっつうアイドルまで来ますがな。
何、ジャンルがむちゃくちゃや?
そうでんねん。うちのレーベル、むちゃくちゃでんねん。音楽ポリシーなし!
共通点はみんなワシの友達。ツレっつうだけや。
おもろそうやなあ、俺のCDも出してくれや。ほなやろか。それだけでんがな。
そのおかげでこうして夜行バス乗せられて大阪来てます。は、は、は。
チケット買うておくんなはれや」

もうワシ、プロモーションマシンである。
どの番組に出ても、それがどんな番組であろうと言うことは同じ。
特に生放送やと少しでも長く居座ったが勝ちなので、
アナウンサーに喋る隙間も与えまへん。
でも頭ん中ではちゃんと計算してて、
XYZのシングル、「PURE」だけは回す時間は残しとくんですな。
そしたらお別れに1コーラスだけでもかかりまっしゃろ。
その後、番組の後ろの何のコーナー潰れてもワシには関係おまへん。
宣伝出来て、シングル回せたらそれでええんです。
これ、すなわち関西式プロモーション。

こうして6枚チケット売ったらもとが取れると言いながら、
そのついでにちゃっかりレコーディングまでやる。
これ、すなわちXYZ商法。

スタジオは京都のタウンハウススタジオ。
朝からデラックス銭湯行って、昼からわさわさ集まってみると、
全然関係ないのに後藤ゆうぞうはんが来ている。
「久しぶりでんなあ、メシでも食いに行きます?」
おいおい、レコーディングは?! である。
これ、中国と同じ。

昼からビール飲みながら、
「そうでっか。CD出すんでっか。元ネーネーズの人たちと。そりゃよろしゅおまんなあ」
うちのレーベルは別に誰とも契約書を交わしたりしてるわけではないので、
別に1枚うちで出して、次にどこから出そうが勝手である。
ワシ自身が昔、大レコード会社との契約でもめて辛い思いをしたので、
他の人に同じことをやりたくない。それだけである。
こうして楽しく酒が飲めればそれでいい。

スタジオではひとり、大村はんが一生懸命ギターを録音している。
クリックなどと合わせてちゃんと録ったことがないので苦労している。
「機械がワシのプレイに合わせてくれんから大変でんねん」
お前が合わせよ!!

スタジオに戻って酒臭い息で、
「ほな仮歌入れまひょか」
あの世界の二井原実に、
「別に音程が悪いわけでもリズムが悪いわけでもないんやけど、
ファンキーの歌は何か・・・歌やないなあ・・・」
と言わしめさせた噂の仮歌ボイスである。

とっとと北京に帰っても残りの作業がやりやすいように、
なるだけ完成形が見えやすいように効果音まで入れておく。
「仮アナウンス入れます。別チャンネル用意して下さい。ほな行きまっせ」
天下の阪神タイガースである。
実際に使われた名場面のアナウンスの使用許可が取れるかどうかわからない。
いざとなったらアナウンスもそれらしく録音する必要があるので、
仮にこんな感じだと入れておくのだ。
猛虎会の方々にも来てもらって歓声も入れてもらおうと思っているので、
ひとり二役でアナウンスと歓声と両方入れる。
打ったぁ!大きい!ドンドンドン!
太鼓の音まで口で入れる。
「おもろいやないかい!」
いつの間にやらそれが本チャンになってしまった。
ええんかい!

あっと言う間に1曲録り終わり、
カップリングの「加古川の男 第31話〜タイガース編〜」
1作目に第4話まで収録したギャグソングの続編である。
「こんなん自分らで勝手に録っとけ!」とばかりさっさと銭湯に繰り出す。
「いやー、銭湯通って40数年!銭湯やったら俺にまかせなはれ!」
わけのわからんこと言いながら後藤ゆうぞうはんもついて来る。
ゆうぞうはんは京都の風呂なしのアパートを、ついには全部屋借り切って、
家族4人と風呂なしの一軒家に住んでいる。
これ、ある種の贅沢!

スタジオの近くの温泉銭湯は非常にいかした銭湯で、
銭湯通って40数年のゆうぞうはんも、銭湯フェチの末吉も大満足。
サウナもついて、これで350円なのが申し分ない。
大村はんがいたら洗髪料の10円を払うか払わないかでまたひとギャグかますのだが、
今日はゆうぞうはんの妙なうんちくだけでさっさと入浴。

ワシはだいたい真っ先にサウナに入る。
乾いた肌がだんだん汗で湿ってゆく瞬間を楽しみたいからである。
風呂に先に入るとこの瞬間は味わえない。

サウナにはだいたいテレビがあって、
そこでサスペンスとか、先日など「名探偵コナン」をやっていて最悪だった。
ちょっと目を離すとトリックとかを見逃してしまうので、
ふーふー言いながらCMまで我慢せねばならない。
ワシ、風呂は大好きじゃがこらえ性がないのじゃよ・・・

今回は「見せます。芸能界のウラのウラ!」とか言う番組で、
岩井小百合がどうやってトップアイドルから転落したかを説明していた。
自分の芸能人生を折れ線グラフにして説明させるのである。
どん底のところを解説しているところで、
ひな壇で一緒に笑うゲストの人々の顔が抜かれる。
「マー坊さんやん!」
元クリスタルキングのハイトーンボーカル、田中昌之さんが出演している。

元たのきんトリオのよっちゃんこと野村義男と、
自称他称「男前」ことバーベQ和佐田とともに
「あ°しすたー(あにまるシスター)」と言うバンドを作ってXYZレコードからCDを出した。
ひょっとしてそのCDの宣伝するんとちゃうん!ゴールデンで・・・
XYZレコードとしては画期的である。
いきなりサウナから出れなくなった。
「さてゲストの方々にも自分の芸能人生を折れ線グラフにして頂きました。
さてこのグラフはどなたの書いたグラフでしょう!」
折れ線グラフのアップ。爆笑するゲストの顔が抜かれてCM・・・

ぶはー!・・・
息も絶え絶えに水風呂に飛び込む。
だいたいにしてそのようなゲストばかりなのでみんなどん底がある。
次はマー坊さんかと思いながらまたサウナに飛び込んでテレビにかじり付く。

「この方でした。アラジンの高原兄さん!」
ぶはー!・・・
息も絶え絶えにまた水風呂に飛び込む。
爆風スランプの前身バンド「爆風銃(バップガン)」で世界歌謡祭に出た時、
その年のグランプリを取ったのがアラジンの「完全無欠のロックンローラー」
ちなみにその時の司会は、坂本久とジュディーオングであった。
懐かしい・・・
思えばあそこでワシらがグランプリ取ってたら、
ワシがあそこに座ってて高原兄がサウナでそれを見てたんか・・・

思い出に浸っててマー坊さんを見逃したらことである。
XYZレコードの宣伝をゴールデンでやることなど滅多にありえん快挙である。
また思い切ってサウナに飛び込んでテレビにかじり付く。
「さて今度の折れ線グラフはどの方のでしょう!」
司会者が叫ぶ。ゲストの笑い顔が抜かれる。
CM!

ぶはー!・・・
息も絶え絶えにまた水風呂に飛び込む。
しかしテレビと言うのはまことにうまく作られている。
いいところで必ずCMが入り、
必ず次を見たくなるのである。
決死の思いでまたサウナに飛び込んでテレビにかじり付く。

見逃したらことなので、わざわざCMの終り頃に早めにサウナに戻って来ているのに、
またテレビと言うのはCM前と同じことを必ずCM明けにもダイジェストで流すのである。
「それはええから早う次に行かんかい!」
遠赤外線のおかげで、いくら水風呂に入ろうが身体は芯からぽかぽか。
サウナ室にちょっと入ればすぐ汗だくである。
「この折れ線グラフを書いてくれた方はこの方です。堀江淳さん!」

ぶはー!・・・
息も絶え絶えにまた水風呂に飛び込む。
堀江淳はええっつうねん。マー坊さんはまだかっつう話や・・・

気になるのでまたサウナ室に戻ってテレビにかじり付く。
画面ではマー坊さんが
「アラジンと堀江くんと俺とで一発屋トリオ言われてるんですよ」
一発屋はええから早うマー坊さん行かんかい!
「これに円広志が加われば・・・」

ぶはー!・・・
息も絶え絶えにまた水風呂に飛び込む。
円広志はええっつうねん!

そう言えばこの辺のヤマハの方々には昔可愛がってもらった。
当時サラリーマンが40万借金すると首を吊らねばならないと言われてた頃、
爆風スランプがまだデビューする前、給料は2万円。
すでに70万サラ金から借金してたワシは、
クリスタルキングに招かれて1本いくらでドラムを叩き、
家もなく、スタジオに住み込みで、
クリキンのメンバーやこの辺のヤマハ所属の方々に可愛がられ、
飯を食わせて頂いて酒を奢って頂いて今がある。
飛鳥了さんの家で作って頂いた冷凍チャーハンの味は忘れはしない。

しかし思い出に浸っていてマー坊さんの出番を見逃してしまってはことである。
また死ぬ思いでサウナに飛び込んでテレビにかじり付く。

そしてついにやって来たマー坊さんの出番!
果たしてゴールデンタイムにあにまるのCDの宣伝は出来るのか!
CM!

ぶはー!・・・
息も絶え絶えにまた水風呂に飛び込む。
後藤ゆうぞうはんが心配して覗き込む。
「ファンキーはん、ほんまサウナ好きやねんなあ・・・大丈夫でっか」
大丈夫ちゃいまんねん!でもこれ見逃したら後悔するからな。
あ、先に出まっか。もうちょっと、もうちょっと待ってておくんなはれ。

死ぬ思いでまたサウナに飛び込んでふらふらしながらテレビにかじり付く。
栄光の大都会の時代の映像。
このしばらく後にワシが参加して、「北斗の拳」とかはワシが叩いている。
しかしテレビはうまいこと作るもんで、その後すぐに折れ線グラフはどん底である。
「その直後に田中昌之さんをとんでもない不幸が襲った!」
CM!

ぶはー!・・・
息も絶え絶えにまた水風呂に飛び込む。
また死ぬ思いでサウナに戻ってテレビにかじり付く。
「野球のボールが喉を直撃し、あのハイトーンボイスが出なくなってしまったのです」
わかったわかった。それは何回も本人から飲み会で聞いた。
原因も不明なんやな。もともと暗示にかかりやすい人やしね。
とあるテレビ番組では「俺が催眠術かかるわけないやないかい!」言うて、
実は一番かかってて受け取ってたもんねえ。
「いや、俺はかかってない!催眠術師が”これはコーヒーです”言うても、
ちゃんと”これはジュースや”言うのはわかっとる。
飲んでもちゃんと”これはジュースや”言う味しとる。
でも”これは何ですか”言われたら、”ジュースや”言うて答えようと思うても、
”コーヒーです”言うてしまうんや。
味はジュースや思うてるんやから、俺は別に催眠術にかかっとるわけやない」
マー坊さん、それを「かかっとる」言うんですわ。

そんな昔話の回想はええ!
画面ではマー坊さんの別録インタビューが流されている。
そして涙・・・
テレビはほんまにうまいこと作るわ・・・
ワシ、もらい泣きしようにも、もう水分の欠けらもありまへん!
CM!

ぶはー!・・・
息も絶え絶えにまた水風呂に飛び込む。
そしてまた死ぬ思いでサウナに・・・

ゆうぞうはんが心配して覗きに来る。
「ファンキーはん、ほんまサウナ好きやねんなあ・・・大丈夫でっか」
大丈夫ちゃいます!
もう死にます・・・

やっと現在の活動の紹介となり、
ついにあにまるのCDジャケットが!
ワシ、もうクラクラです。
そのまま画面は田中昌之コーナーを〆るわけでもなく
だらだらと「情報屋ジミー」と言うコーナーにそのまま突入。
おいおい、これドラムのジミちゃんのこととちゃうやろなあ・・・
「ドラムのジミ橋詰、実はウラの職業は情報屋」っつうんやったらオイシイのになあ・・・

しかしもう体力は限界!
確認する体力もなく、水風呂に飛び込んで気絶寸前である。
ゆうぞうはんが心配して覗きに来る。
「ファンキーはん、ほんまサウナ好きやねんなあ・・・
三井がスタジオで待ちくたびれて探してますで」
わかりました。もう出ましょう!

結局、温泉銭湯で温泉に入らず、サウナと水風呂だけであった。

ジミちゃんが情報屋やったんかなあ・・・
んなわけないか・・・

ファンキー末吉


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