ファンキー末吉とその仲間達のひとり言
----第63号----
平成 14/06/12 (水) 17:40
北京のスタジオにもADSLがひかれ、日本とチャットのようなアホMailの応酬をしながら常時接続で仕事をしている。
周りが何やら騒がしくなったと思ったらテレビの周りが人だかり・・・
「ファンキー、ファンキー、出てるよぉ」
みんなが呼ぶので見に行ったら、アホ面したドラマーが・・・
そう言えば収録したなあ、こんな番組・・・
ギタリストはいつも隣で一日中音楽を作ってるオタクの新人くん。
画面上では短パンである。
アホか・・・
この日の収録は確か先月の終わり頃。
首都体育館でオムニバスコンサートに陳琳がゲストで呼ばれ、そのバックバンドとして前日の昼間に会場でリハーサル。
終わったらそのまま歌番組をふたつ収録と言うものであった。
ワシは一応S社長から聞いていたので、それでも身なりのいい格好をしていたが、
オタクの新人くんはひとりだけ聞いてなかったのか聞いていて忘れたのか、
はたまた聞いていても一番身なりのいい格好がそれだったのか、
とにかくその日の収録は全部その短パン姿であったと言うもの・・・
日本では半日で2本の歌番組の収録と言うと大変だが、こちらでは別にカメリハもサウンドチェックもしないので楽勝である。
収録場所に着いた。
すでに観客が会場にひしめいている。
観客の目の前でドラム等をセッティングしてたと思ったらいきなりテーマソングが流れ、司会者が出てきて番組が始まる。
「映りこんだ!」ととっさに身を隠すワシ、そのままギターを抱えてぼーっとしている短パンのオタクの新人くん。
ステージのバックスクリーンに映し出される外国曲Top10。
盛り上がる観客、
ドラムがスクリーンの真正面なのでこそこそと逃げ出すワシ、
「あ、この曲知ってるよ」ニコニコ笑いながらそのままステージ上からスクリーンを眺めるオタクの新人くん。
スクリーンにお前の影が出来てるんですけど・・・
いつの間にやら陳琳が紹介され、慌ててあてぶりを始めるワシら、
まだステージに上がってない他のメンバー。
もうわけがわからん・・・
収録が終わったらまた別の収録場所へ。
ドラムを運び込んでセッティングしてたら観客が入って来る。
先ほどの客よりかなり若い。
収録が始まるが、なにぶんモニターもないので音が小さく、実際シンバルでも叩こうものならもうオケも聞こえない。
全てを寸止めで叩く。
大リーグボール3号で健を痛めた星飛雄馬のようになりはせんかのう・・・
おとなしく座っている客を少々煽って、
「次は最後の曲だから立って手拍子しましょ」
と客を立ち上がらせる陳琳。
客に手拍子などされたらますます曲が聞こえなくなるんやけどなあ・・・
曲は最後の曲。
段差のあまりないステージに勝手に上がってきて握手をする客、
歌ってるのに強引にサインをねだる客、
しまいにはそのままカメラの前で記念撮影をする客、
もうむちゃくちゃである。
放映画面ではもうその頃にはフェードアウトして番組が終わっていた。
生放送やったらどなんするんやろ・・・
台風一過でドラムを片付けるワシには目もくれず、陳琳をおっかけて楽屋に集団移動する観客。
楽屋ではカギをかけてマネージャーが対応する。
部屋から閉め出されてぼーっとする短パンの新人くん。
ドアをがんがん蹴飛ばして「サインしろー」とねだる観客。
いまいには怖いおじさんがやって来て観客を蹴散らした。
そうそう、放送局は政府の持ち物なので、いるのよねえ、怖いおじさん。
瀋陽の日本領事館に逃げ込んだ北朝鮮亡命者をつまみ出した人達。
11年前、電源を全部落とされてそれでもステージを降りなかった爆風のメンバーを、別室に監禁して銃を持ってドアに立ってたあの人達。
武装警察と人は呼ぶ・・・
武装警察って射殺する権利を持ってるってほんまやろか・・・
XYZの北京ライブがもうすぐ始まる。
観戦ツアーで北京までおっかけるファンに餃子を奢るべく、自転車に乗って店をリサーチに行くお気楽なワシとは違って、
主催側である安田は気が気でない。
「安田ぁ、友達が来たい言うてるんやけどチケット数枚まわしてくれんかぁ」
「何言ってるんですか、チケットなんかもう全然残ってませんよ。」
「ほな増刷したらええやないの」
「何言ってんですか、公安が来て500人以上入れたりした時点で即刻中止なんですから」
ああ、怖いおじさん達がまたごっそりと会場を警備するわけね・・・
先日の原宿アストロホールでのライブを見に来た安田、
大使館側からの厳重注意として、
ステージで上半身裸になったりしないこと、とか政治的な発言をしないこと、とかいろいろ言われてはいたものの、
Hey DJ!での二井原の下ネタMCには目が点になった。
「みんなぁ、オナニーは好きかぁ!」
はイカンじゃろ、やっぱ・・・
また銃を突きつけられて別室に監禁されるのか気が気でない和佐田、
「中国で暮らすんだったら一度ぐらいパクられるぐらいじゃなきゃハクがつきませんよ」
と涙ながらに強がる安田、
でも実は一番大きな落とし穴に気付いていない。
別の日本人歌手をゲストとしてノーギャラで呼べと言う大使館側からの要請に対して、サンプラザ中野やMIEさんと交渉していた安田、
結局全てがNGとなって泣きが入った。
「もう無名でもいいから誰かブッキングして下さい。顔が立ちません」
「無名でもええんやなあ」
「もう仕方ないです」
「物凄い無名やでぇ。それでもええんやなあ」
「いいです」
じゃあ・・・「三井はんと大村はん」!
突然連絡を受けて、ウキウキと海外旅行気分で旅支度をしている彼ら。
彼らの持ち歌の半数は下ネタであった。
日中国交正常化30周年。
日中友好もこの年で終わるかも知れん・・・
ファンキー末吉