ファンキー末吉とその仲間達のひとり言
----第85号----
平成 15/06/10 (火) 1:09
XYZの4枚目のアルバム「?」(フォー)が発売され、全国48都道府県を廻るツアー
(まあアルバムが出ようが出まいがどうせこのバンドはツアーに出るので同じであるが)
の初日と2日目が終わり、高知に帰って来た。
高知と言えば酒であるが、
今日は車を運転して子供を仁淀川まで連れて行ったので飲んでない。
東京だったら子供を連れて大自然と言うと半日仕事だが、
ところがここ高知では、「海に行こか」で30分、「川に行こか」で30分。
そう言えば生まれ故郷の香川県でも、
小さい時から「泳ぎに行こう」と言うと海で、しかも自転車で行っていた。
沙弥島(関連サイト:http://www.shikoku-bt.go.jp/tyousa_kenkyu/RIS/RIS_HP/www/cityoffice/kankou/manyou.html)
とかによく行ってたが、
こんなところに自転車で行けるなんてなんて恵まれた環境なのか、
都会に出て行って初めてわかる。
同様に高知は土佐清水出身の五星旗のベースの仮谷くん、
家庭でカツオのタタキが出ると「またおふくろ手を抜いた」と愚痴っていたと言う。
猟師町のこの土佐清水
(関連ネタ:https://www.funkycorp.jp/funky/ML/33.html)
大漁の日にはご近所に捕れたてのカツオが配られたりする。
主婦はそれを藁で巻いて火であぶり、氷水でシメてさばいて、
ちょっと厚めに切り分けて大皿にどんと盛り、
それにあふれんばかりの玉ねぎスライスや大葉や、
欠かせないのは生ニンニクのスライス等をどんと盛り、
ひたるほどのポン酢をかけてしばらく待てばそれで本場カツオのタタキの出来上がり。
高知に来た友人に
この本場カツオの皿鉢料理を食べさせてあげたりするとそれはそれは感激する。
同様に今全国的にブームである讃岐うどんも、
ワシは小さい頃は毎日食ってたのでさほど旨いとも思わず、
ただ東京に出てうどんのまずさを思い知ったのみである。
仮谷くんも最初に東京でカツオのタタキを食った時は絶句したと言う。
自然とてそうで、ちょっと海を見たいと思っても、
電車にゆられて数時間、もしくは車で半日かけて運転して、それでも湘南か千葉である。
海とか川とかに車でひょいと行けるなんてなんて恵まれた環境なことか・・・
今回は仁淀川に行った。
橋からそのまま河川敷に降りてゆき、炭火を起こしてバーベQをやり、
子供が川で泳ぐ・・・
川で泳ぐ?・・・
そう言えばワシも小さい頃一度だけ川で泳いだ記憶があるのは高知県。
海と違って流れがあるし、淡水やから全然違うのよね・・・
生まれ故郷の香川県と違って、高知はさすがに海からすぐ山なので、
鏡川、仁淀川などいろいろある。
近くに蘇鶴温泉と言う温泉も見つけたし、
「かんぽの宿」もあり、そこで温泉に入って気づいた。
「ワシは運転やからビールが飲めんやないの!!」
高知の実家には厳格な母(ファンキー国恵:以後Kと呼ぶ)がいて、
夜7時には床に入り、8時には就寝、朝は6時過ぎには起きる生活である。
ミュージシャンにとって健康的なのか不健康なのかわからん。
家には当然酒なんぞないので、外食の時にやっと口にすることが出来る。
そのまま晩飯を川の近くのファミリーレストランなんぞにされた日にゃあ、
運転のためビールを飲めずに8時に就寝・・・そりゃいくらなんでも寂しすぎる!!!
と言うわけで夜は車を親戚に返して、「ひろめ市場」と言う巨大屋台村に行くことした。
(関連ネタ:https://www.funkycorp.jp/funky/ML/82.html)
ここならいろんな種類の食い物もあるし、子供が何を食べたいと言い出してもよい。
テーブルを探して落ち着くが、隣のテーブルでは奇妙な風景。
たまたま隣り合わせになった酔いどれのおいちゃん達ふたりと、
見るからに学校帰りの女子中学生のふたりとが仲良く盛り上がっているのである。
東京でこんな光景見れるかぁ?・・・
高知の家庭では親戚にひとりやふたりは必ず酔いどれがいるので、
(おとんやおかんが酔いどれだったりもする)
子供たちは必然的に小さい頃から酔いどれの相手に慣れている。
別に女子中学生が学校帰りに見も知らぬ酔いどれのおんちゃんに話しかけられても、
それはそれでさばくのがうまいと言うか、日常の延長でしかないのである。
さてワシも腰をすえて飲むか!と思ったら
気がついたらポッケには1000円ちょいしか残っていない。
うーむ・・・先ほど親戚の車にガソリン入れて返したのが命取りであった・・・
家族でメシ食うのに1000円しかないのが悲しい・・・
厳格な母Kなんぞにこのことを知られたら何を言われるやわからんので、
こそこそと外のキャッシュサービスに金を引き出しに行く。
しかし運悪く「提携銀行が時間外のためお取り扱いできません」
がっびーん!!!
この日は日曜日、毎日が日曜日みたいなワシにはよくあるのよこのテのこと・・・
あとよくあるのがいい年こいて銀行に残がないこと。
先日なんぞ銀行口座に350円しか残ってなかった。
43歳で家計の全てを稼ぎ出すその口座に350円ではアカンやろ・・・
美人秘書A(しかし中身は単なる河内のおばはん)に電話して、
「すんまへん。個人口座にちょっと会社からいくらか入れてもらえんやろか・・・」
とお願いする。
先日なんぞ、
本の印税たら何たらが振り込まれたとの連絡をファンキーコーポレーションから受け、
「じゃあどの口座に振り込みましょうか」
と経理担当の美人社員N(しかし中身はただのオッサン)から確認が来る。
喜び勇んで
「そりゃもちろんワシの個人口座に!!」
とワシ・・・
ところがこのNとAがふたりで話してて
「末吉さんとこ振り込んだらどうせ酒に化けてなくなっちゃうから、
やっぱAさん管理の口座に振り込むわ」
「そうだわねえ。そうしましょ、そうしましょ」
と、その印税はワシの手の届かないところところに行ってしまう・・・
振り込む側と振り込まれる側が結託しとるんやからワシのところに来るはずがない・・・
まあそのおかげで会社(個人会社)は潰れずにまわってゆくのだが、
ワシなんぞ口座に残がなくなるといつもAにおねだりして振り込んでもらわねばならない・・・
ワシの金なのにーワシの金なのにー・・・
ま、会社潰れるよりええか・・・
まあしかしいくら今日は珍しく残があると言っても、
日ごろから信用のないワシが、厳格な母Kに
「今実は1000円ちょいしかないんや」と言う勇気はなく、
ふと見ると厳格な母Kは自分の分は自分で注文しているようなので、
こりゃこの屋台村のシステムはええなあとばかり子供に冷麺をふたつ注文し、
残り500円を握り締め、テーブルに戻る。
さすが母である。自分の食べるもんと、ついでにワシの分のビールも注文してくれている。
えやないの、えやないの・・・厳格と言っても母は母である。
そしてひょっとしたら年金生活のこの母の方がワシより金持ちかも知れん。
「あんたは何食べるん?」
と厳格な母K。
「ワシ・・・子供の残した冷麺でええわ・・・」
何としても金がないことを悟られたらアカン!!
ところがそれを聞いて厳格な母Kは大笑い。
「あんたこの子達がどれだけ食べるか知っちゅうがかえ!
見てなさいや。全部食べてしまうきぃ!」
うむ・・・では子供たちのには手をつけず、とりあえず厳格な母Kのつまみに手をつける。
ウツボのタタキ・・・
またこれが絶品である。
東京でこんなん食えるか?!!!
カツオのタタキと同様にたくさんのツマと一緒にポン酢で食べる。
これが旨い!!!
「あんた・・・これだけでええの?・・・お腹減ってないの?・・・」
そう聞く母に
「いや・・・僕・・・今日はあんまし減ってないんです・・・」
思わずウソをつくワシ・・・
何としても金がないことを悟られたらアカン!!
幸いこの日、厳格な母Kは機嫌がよく、このウツボのタタキが旨いと言うて、
ついでにもうひとつ頼んでくれる。
支払いの時に下を向いて見ない振りをしてると勘定も母が払ってくれる。
「しめしめ・・・」
ポッケの500円の握り締め、ビールのお代わりに行くワシ。
やっぱ食いモンよりも酒でしょう・・・
これでめでたく所持金3円である。
さてそのままこれを飲み干して家に帰って後は寝るだけ!
とそう思ってた時にすでに冷麺を平らげた上の子供が
「おもちゃ屋さんとこ行ってくる」
いやな予感・・・
そして予想通り「パパあれ買って!」と来る。
娘よ。お前も高知の女なら(そうなんかのう?・・・)空気を読め!空気を!
お父ちゃんはお前をそんな娘に育てた覚えはない!
(ワシが育てたわけではないとも思うが・・・)
お父ちゃんのこの最後の一杯のビールでおもちゃが買えなくなったとしても、
それはそれ、高知の女やったら(北京の女なんちゃうかのう・・・)
「お父ちゃん、私はおもちゃいらんからお父ちゃんもう一杯ビール飲んで」
とでも言えんのか!
(さすがにそんな高知の子供もおらんが・・・)
などと錯乱した頭の中ではいろんなことを考えたりしてみるが、
「いかんいかん!おもちゃはいかん!本ならええけどうちはおもちゃは禁止!」
厳格な母Kに知られないように冷や汗をたらしながらそう説教するワシ・・・
「そう!あんたには今日ひとつ買うたげたでしょ。もういかん!」
幸い厳格な母Kもそう言うので胸をなでおろす。
「そうそう、これ食べ終わったらもう帰るよ!」
一件落着・・・ビールを飲み干す・・・
しばらくして下の子供も戻ってくる。
「ウルトラマンの卵があったよ・・・」
何じゃそのウルトラマンの卵っつうのは・・・
「卵の中からウルトラマンが出てくるの」
100円ぐらいのオマケみたいなやつやな、きっと・・・
しかしその100円もワシ・・・持ってない・・・
息子よ。お前も男やったらわかるじゃろ!
いや、今わからんとしても将来は絶対にお父ちゃんの気持ちはわかるはずじゃ。
ここで口が裂けても「買うてくれ」とか言うようやったら、
お父ちゃんはもうお前のことを金輪際高知の男とは認めん!
(高知の男じゃないような気もするが・・・)
とかまたわけのわからんことを考えとったら、いきなり厳格な母Kが、
「そやねえ。えりちゃんには今日一個買うたげたから、
じゃあさとくんは一個だけ買うてもらいなさい」
ひえーっ・・・・
かくしてワシは厳格な母Kから小銭をもらって子供のおもちゃを買いに行く、
43歳自由業、家計を支える一家の大黒柱であった・・・
ファンキー末吉