ファンキー末吉とその仲間達のひとり言

----第91号----

2003/09/26 (金) 11:50


女子十二<楽<坊

零点のCDが発売となったようで、先日レコード会社に行ったら箱に山積みしてたので、
「ワシにも1枚くれ」と言ったら「1枚10元です」と言われた。
「ワシから金とんのか?!」と思ったらメンバーも金出して10枚単位で買ってるので、
「そうかぁ・・・こちらではサンプルなんてくれないからなあ・・・」と思い直して20枚買った。
メンバーの中には100枚単位で購入してる奴もいる。
そうかぁ・・・友人に配るだけでも結構な数だからなあ・・・

正規版は50元ぐらいで売られているから、ワシも100枚買って、
街で50元で売ったら4000元かぁ・・・と思いながら、
「自分で海賊版業者やってどないすんねん!」
とばかり思い直す。

その日の会議は全員サインを書きながら臨む。
終わったらそのままリハーサル。
今回は北京郊外のえらい遠いところに倉庫借りて、そこに機材入れてやってるので、
一度そこに行ったらもう北京まで戻れない。
戻れないと言うことは行くまでに他の仕事は全部終わらせて行かねばならない。

仕事と言うのは忙しい時に来るもんで、
この大仕事の他に香港から頼まれたアレンジが2曲が今月までにデッドラインで、
あとチャイニーズ・クリスマスアルバムのアレンジが2曲が来月半ば、
そう言えば香港のWINGの新曲も来月、
前日は徹夜でこの日のリハのためのアレンジを上げ、譜面を書き上げた。
リハ終了後にレコーディングデータからライブ用のデータを取り出すのに徹夜。
ふらふらで寝てたら電話がなる。

「もしもし、朝早くすみません」
見れば朝の9時である。
そう言えば11時からリハとか言ってたっけ・・・
いや、CM撮影が入ったから午後になったんじゃなかったっけ・・・
いや、それより日本語なんだからそれ関係じゃないはずだ・・・
とか働かない頭でいろいろ考える。

「実は今度、日本で売れてる女子十二<楽<坊のドキュメントを撮りたいと思いまして・・・」
働かない頭で一生懸命考えるが、浮かんで来た映像は北朝鮮美女軍団である。
「それで、うちのコーディネーターがあまりその辺のことに詳しくなかったもので・・・」
そうかぁ・・・日本のテレビ局なのね・・・
「北京のことならファンキーさんに聞けと言うことで・・・」
誰がそんな噂を流したんじゃい!
「何とか取材出来ませんかねえ・・・」

そう言えば先日スタジオ仕事の後に飲んでたらスタジオの人間が、
「ギタリストLが最近日本で凄いらしいじゃないの・・・」
と言うので聞いてみたら女子十二<楽<坊のプロデュースをやったそうで、
「ああ、なんか売れてるみたいねえ・・・」
と答えたのを思い出した。

そう言えばだいぶ前に電話がかかって来て、
「日本で発売されるCDに曲を書いたんだけど著作権ってどう言う契約すればいいの?」
と相談されたので、
「それって中国人?日本人?
中国人だったら売れないから現金欲しければ買い取りにした方がいいよ」
と答えていたのを思い出し、
すぐにギタリストLに電話して、
「お前がこの前言ってたのは女子十二<楽<坊か?!
絶対に買い取りにするな!日本の方式でその場では一銭にもならなくても印税にしろ!」
とその場で説明。
香港、台湾では印税の他にアドバンスと言って、
売れても売れなくてもある一定の金額を保証してくれるので、
買い取りだけが常識の中国人に
契約してもその場で一銭にもならない日本のシステムは理解しづらいので、
印税システムのいろはから説明したのを思い出す。

「もしもし、もしもし、聞こえてます?」
そうだ、日本から電話がかかってたんだっけ・・・
「はあ・・・何でしたっけ・・・」
全然会話にならないワシ・・・
「せめてそのプロデューサーでも取材出来ませんか」
と言うので「明日会いますよ」と言うと、
「彼女達本人に会うことは出来ますかねえ」
と来る。
「はあ・・・まあ友達の友達を伝ってゆくと彼女達に行き着かないこともないと思いますが・・・」
まあこちらの音楽界なんて狭いもんだからその気になれば酒飲むのも不可能ではない。
「あのう・・・お酒は飲まなくていいので取材を・・・」
そうですね。そうですね。
「でしたら私の仕事を手伝ってもらってる美人コーディネーターHさんを紹介しますんで、
彼女だったら日本のテレビ局の仕事なんかもよくやってるし、
音楽界にも強いんで電話してみればどうですか」
先日一緒に飲んだH女史の顔が浮かぶ。
「いえ、今の段階ではちゃんと仕事として発注できるかどうかわからないので・・・」

ほなワシは何なの?
 
北京の携帯はご無体なシステムで、電話を受けてもかけた人と同じ額を払わねばならない。
と言うことは日本から受けているこの国際電話料金をワシが自分で支払いながら、
ただテレビ局のメリットのためだけに睡眠時間を削りながらお話ししているわけである。

「彼女たちはどう言う人たちなんでしょうかねえ」
テレビ局の質問は続く。
「うーん・・・普通のその辺の女の子なんじゃないですか・・・」
「中国でもやっぱり大人気なんですか」
「いや・・・日本で売れてるからと言って必ずしも中国で売れてるとは限りませんよ」

高い国際電話料金を自分で払いながら、
日本で報道されている香港、台湾の日本ブームと、
ここ北京での日本の音楽への興味との違いを一生懸命説明する。
なんか日本のマスコミって、落としどころが先にあって、
それに合わせた情報収集をしてるところがあるようで、
それと違った観点の発言をすると非常に戸惑うようである。
彼女たちが中国でも大スターで第一線の人じゃないと
話が最初っからひっくり返ってしまうと言うニュアンスが感じられるのでつい、

「だいたいねえ。日本で活動してる中国民族楽器奏者に一流はいないよ!
みんなねえ、口では私は中国で一流ですって言ってますけどねえ、
だいたい中国で一流だったら日本に来ます?中国で稼ぎまくってますよ。
日本人は耳ないからねえ。文化的に中国に弱いしねえ。
ちょっと民族楽器の音聞いたらそれが一番だと思っちゃうしねえ」

ワシもちょっと疲れてたのであろう、
日本にいる中国人がいつもぼやいてるセリフをそのままぶつけたらしばし無言・・・
「・・・それはまた・・・手厳しいご意見ですねえ・・・」

すまん、ヤン吉!またやってしもた・・・

五星旗の二胡奏者、ヤンヤンの顔が浮かぶ・・・
お詫びにお前のアイドル、零点のCDをメンバーのサイン付きでプレゼントするからな・・・

電話を切ってしばし考える。
中国の音楽が日本で売れることは喜ばしいことである。
友人のギタリストがそれで大金持ちになることはもっと嬉しいことである。

でもワシには関係ないこととちゃうん・・・

高い国際電話料金払って目が覚めてしまった。
またアホな文章書いてるうちにもうすぐ昼である。
仕事!仕事!今日も一日が始まる。

日本に帰るまであと数日、頑張りますか。

ファンキー末吉


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