ファンキー末吉とその仲間達のひとり言
----第96号----
2004/01/22 (木) 15:20
今日は中国のお正月「春節」
中国に関わり始めて今年で14年。
日本には旧正月を祝う風習がないので、結局毎年日本で何か仕事が入り、
この13年間一度も中国で春節を過ごすことがなかった。
日本にいる中国人は、日本では普通の日と変わらないこの日に、
祖国の春節を想いながらいつものように仕事をし、寂しく年を越す。
この13年、そんな中国人と共に餃子を食い、酒を飲み、
ささやかなる春節を日本で過ごすワシだったが、
今回ついに初めて中国で春節を過ごす。
でも一体どうやって過ごせばええんじゃろ・・・
何せ初めてのことなので皆目わからない。
日本で正月を過ごしてから北京に戻って来たらこちらは年末気分で、
春節までにレコーディングを終えようと言うのでスタジオに駆り出される。
ひどい時にはスタジオのハシゴである。
しかしドラマーはドラムセットがあって初めて仕事が出来るので大変である。
S社長のスタジオでレコーディングしてくれれば
ワシのセットが常備しているので身ひとつで行けばいいのだが、
ここの製作物でない場合はなかなかそうもいかない。
パール楽器に頼んで中国用にひとつドラムセットを作ってもらい、
台湾経由でこちらに送ってもらい、
プロデューサーL(女子十二楽坊のプロデューサーとは別)
のスタジオにも常備しているのだが、
結局それも別のスタジオでレコーディングと言うとドラムセットを運び込むしかない。
引越し屋を雇って運ばせる。
人夫が3人と運転手がトラックでやって来て180元(約2500円)なので安い!
プロデューサーLのスタジオからドラムセットを運んだら、次の日が掛け持ちとなった。
仕方ないのでS社長のスタジオからLのスタジオにドラムセットを運び込む。
結局Lのスタジオのドラムセットが入れ替わってしまったのだ。
そしたら今度はS社長のスタジオから連絡が来てドラムセットが必要だと言う。
ドラムセットはマイクまでセッティングしたら動かせないので、
今度はワシの家にあるドラムセットをS社長のスタジオに運び込む。
東京のドラム部屋を解約し、山ほどあったドラムセットを全部北京に送ってあるのだ。
その総重量650kg・・・
日本に2セットを残したままこちらには5セットあることになる。
結局それぞれのスタジオのドラムセットが入れ替わり、
最終のレコーディングが終わったらまた引越し屋を雇ってもとに戻そうとしてたら、
結局晦日前までレコーディングが続く・・・
こちらのブッキングは
「今から空いてる?一曲叩いてもらいたいんだけど・・・」
だから仕方ない。
レコーディングが終わったら大晦日なので
今度はドラムを戻すべきスタジオが空いてない。
仕方がないので正月明けにまとめてやろうとドラムを片付ける。
電話が鳴る。
「年末だしメシを食おう」
出かけてゆく。
酒を飲む。
酔い潰れる。
「大晦日は俺の家で一緒に年を越そう」
プロデューサーLも、去年プロデュースした零点のメンバーもそう言ってワシを誘う。
ドラム終わったら今度は飲むのに忙しいんですけど・・・
結局プロデューサーLの家に夕方からやっかいになる。
親戚中が集まって賑やかに過ごすのかと思ったら、
想像と違い、彼女と、田舎から出てきた彼女の母と、家族水入らずで過ごす。
北京にいる3兄弟がそれぞれ自分の「家」で家族水入らずで過ごすのだそうだ。
こんな早い時間に呼び出されて何をするのかと思ったら早々とメシである。
早い話、食うと飲むしかやることがない。
山ほどのご馳走と酒が並ぶ・・・
それを早くから年を越すまでずーっと食いっぱなし、飲みっぱなしなのである。
テレビでは春節晩会(日本の紅白のようなもの)が始まる。
数億人が見るこの番組に出ることは
やはり歌手としては大きなステイタスになるのであるが、
最近は日本の紅白と同じように辞退する歌手も増えていると聞く。
紅白に2度出場させて頂いた時、
年末の3日間がびっしり押さえられるのにはびっくりしたが、
こちらでは1ヶ月がごそっと押さえられると言うから大変である。
プロデューサーLの家でも別にテレビはつけているが見てるわけではない。
「ダサくて見る気がしない」らしい。
日本の紅白で演歌歌手が浪々と歌うのと同じで、
民謡とか革命の歌とか、「いかにも中国」と言うのがワシには面白いが、
やはり若い世代にとっては古臭すぎるのか・・・
料理に箸を付けながら更にどんどん料理が作られてテーブルに並ぶ。
はっきり言って食いすぎである。
もう食べられましぇーん!と言うのにトドメに餃子が出てくる。
中国では春節の餃子は縁起物。
「1個だけでも食えよ」
と言うので無理して食べるが、これがなかなか旨い!
「中にコインが入ってるのがあるからね。それが大当たり!」
中国では餃子を包むときにいくつかコインを入れておいて、
それを食べ当てた人はその年お金に困らないと言う風習がある。
お金には困っているので是非食べ当てたいもんじゃ・・・
満腹なのに更に食う。
死ぬ思いで10個以上食うが、誰にも当たらない。
「あらあら、あっちの方の餃子だったかしらねえ・・・」
お母さんが更に餃子を煮てくれる。
最初からそっちを煮てくれよ・・・
死ぬ思いで更にいくつか食うがやはり当たらない。
Lの彼女が私のために選んでくれる。
「これよ、きっとこれが当たりだわ。食べてみて」
もう食えん・・・
しかしそう言われて食わないわけにはいかないので食うが、やはりハズレである。
「じゃあ俺が選んでやろう。これが当たりだ。食べてみろ」
Lがそう言うのでまた食う。
死にそうなんですけど・・・
目が回りそうな思いをしながらそんなことを続けてたらついに当たりを食べ当てた。
みんな大喝采!
しかしワシにしてみたら当たったことよりももう食わなくていいことが嬉しい・・・
食い続け、飲み続けでいよいよ今年もおしまい・・・
除夜の鐘はないが、表でいきなり爆竹が鳴る。
年越しは爆竹や花火が鳴り響く中国の正月だが、
火災や怪我が続出するために北京市内では禁止されている。
中国の伝統的な行事だが今では違法行為と言うことだ。
と思ったら年越しと同時に遠くで花火が一斉に上がる。
郊外では合法なので町中に鳴り響く爆竹の音がここまで聞こえているのかと思ったら、
何と大きな打ち上げ花火の山である。
窓から見える郊外の打ち上げ花火はまるで隅田川の花火大会である。
これは凄い!
ひとつの町全部が花火を上げているのである。
春節は北京より地方都市の方が賑やかで面白いと言うがその通りなのであろう。
恐らく中国中の小都市が花火大会となり、その足元では爆竹が鳴り響く・・・
・・・それにしてもケタが違う・・・
こちら北京の部屋では新年のお祝いのショートメールや電話が鳴り響く。
零点のメンバーの家に電話をしてみる。
「お、ファンキー!おめでとう。じゃあうちにおいでよ」
じゃあ予定通りハシゴしますか!
Lの家を早々とおいとましてタクシーを探す。
外の気温はマイナス10度。
隅田川の花火大会とはえらい違いである。
やっと空車が来たが「もう仕事終わったから乗せない」と乗車拒否。
運転手さんも早く家に帰って正月を楽しみたいのであろう・・・
・・・寒いんですけど・・・
身も細るような・・・と言うよりは食い過ぎで太った体が凍える・・・
マジで凍え死んでしまうのでプロデューサーLに家まで送ってもらう。
零点の家に電話をして「タクシーがないので行ったら帰れない」と言うと、
「じゃあ明日来いよ」と言われる。
こんな毎日が続くわけね・・・
日本で正月を過ごし、戻って来たらこちらで正月を暮らし、
そりゃ太るわのう・・・
今年もよろしく。
ファンキー末吉